「友達」の定義を問う

 4(爆豪視点) |雄英1年・爆豪くん仮免合格後

「最近、雄英生女子への声掛け事案が報告されている。寮で生活する分には必要ないとは思うが、外へ出る時は団体で行動するように」
「先生~!なんで男子しか居ない時に言うんすか」
「お前らもヒーローになるなら守る方も学ばないとな」
絶対に面倒臭がってるだけだ。きっと誰もがそう思ってるだろう。寮の共同スペースに相澤が来たのは、丁度女子が風呂に行っている間だった。女子が狙われてる?だから何だと言うのだ。仮にもヒーロー目指してるヒーロー科の女子なんぞ、守られる立場じゃねぇだろうが。
くだらないと部屋に引きこもろうとした所を、クソ髪に無理矢理引き止められた。おい、俺を巻き込むんじゃねぇ!
「そういや、さっきあいつら出掛けるって言ってなかったか?」
「じゃあおいら達も行こうぜ!」
「峰田くん、遊びに行くわけではないのだぞ!」
盛り上がる奴らにうんざりしつつ、疑問に思ったことを相澤に問いただすことにした。この分だとどうせ駆り出される。ならば必要なのは情報だ。
「犯人、特徴とかねぇんかよ」
「それが分かれば苦労しない。いままでに報告はあったが、それぞれ全く違う容姿だそうだ」
「複数犯てことか?目的は?」
「それもわからん」
「役にたたねぇな」
「爆豪くん!先生に向かってその口の利き方は良くないぞ!」
「…ほかに、何が聞くことはあるか」
その問いに答えるものはいない。もう一度念押しして相澤は去っていった。
何もかもがあやふやだ。霞か何かから守れってか?




そうしてモールへと行ってみれば、団体行動だと張り切る奴も出やがる。俺は颯爽と手近にいたの首根っこを摑まえて群れないことを宣言した。多を守るより一人を見張っていた方が効率がいいからだ。こいつが靴屋に用があることも分かっている。同じ目的があるのならこいつでいい。
まっすぐにたどり着いた靴屋で、から靴のサイズを聞き出す。女の買い物は長いし、あれもこれも目移りをする。ババアもそうだが、時間の無駄だ。棚からそのサイズの靴を取り、案の定目移りを始めていた女に投げつけてやった。その後、自分も真新しい靴を買った。
モールは平穏そのものだ。何も起こりそうもない。しかし目を光らせる事は怠らない。隣でが皆と合流しようなどと言ってくるので、速攻却下してやった。何のために離れたと思っとんだ。


極め付けとばかりにヴィランの騒動が起こった。相澤が懸念していた相手ではなかったが、相手は大型の攻撃性のあるヴィランだ。爆破していい奴だと判断すれば行動は早かった。駆けつける間に側にいるガキどもから気を逸らす方法を考えていると、横からが子供の救助を申し出てきた。そういやこいつ、こないだセメントスから個性の特訓を受けてたな。ならばと行動を先読みする。の個性で防護壁が作られるのと、俺の勢いの乗った爆破がヴィランに直撃するのは同時だった。




「爆豪くん、隣空いてるよ」
帰りの電車。は自分の隣を指して言うが、俺は無視した。呑気なもんだわ。何のために俺が残ったか忘れたのかこの女。だからといって、思い出させてやるのも面倒くさい。呑気な女は最初は気を遣って起きていたようだが、そのうちに首が揺れ始め、今は完全に寝かけている。周りに気を張っている俺の方がバカらしく思えてきた。
アホらし。
離れて座ることも考えたが、何かあった時に対処しやすいのはやはり隣しかない。と、一応予防線を張って仕方なく隣に座る。時刻はもうすぐ午後8時。いつもであればもう寝る支度をしている頃だ。面倒に巻き込まれたせいで生活リズムを乱されるのは腹立たしい。ため息が出るのは仕方のないことだった。


腕を叩かれる感触に意識が浮上する。起きているように努めていたが、電車の暖房の心地よさにいつのまにか寝てしまったようだ。隣を見れば、の顔が間近にあった。
ああ、クソ。寄りかかってたんかよ。
こいつが先に起きていたという事実も腹立たしい。目的の駅に着いたことを確認して、早足で下車した。
基本的にどこでも寝られるようなアバウトな神経は持ち合わせてはいない。だからこれは明確に「失態」だと思った。

(2020/9/26) <PREV▼ TOPNEXT >