「恋人」の構文は難解

 2 |海の向こうのヒーローへ

爆豪くんが海の向こうへ旅立ってしまってから海外ニュースを録画するようになった。
海外にもたくさんヒーローはいるけれど、ヴィランの犯罪率は日本とは比べ物にならないくらい多い。その中でも取り分け犯罪率の高いアメリカに爆豪くんはいる。あっちは派手な個性が受けるらしいから、さぞ活き活きしていることだろう。多少建物が破壊されてもヒーロー活動なら許されるので、市街地で全力のハウザーインパクトも打ちまくりかもしれない。それはそれで楽しそうだ。
日本からの応援としてヒーロー活動をしている彼のメディア露出がそれほど多いとは思っていない。現に向こうには向こうのチャートナンバーワンヒーローがいるし、名のある事務所だっていっぱいあるからだ。あちらのニュースサイトやSNSで情報収集できれば良かったのだが、さすがにそれなりの言語スキルが必要だと悟りに入るのは早かった。そうすると日本向けに字幕の出る番組に頼る他ない。日本では聞いたことのないヒーローばかりでニュースはいつも終わってしまう。ヒーローオタクででもあれば楽しい作業だろうが、私の興味の範囲外なのでこればかりは楽しいとは言えない。
でも、もし一瞬でも彼が海の向こうで元気にヴィランを殴り飛ばしているところを見ることが出来たら。その時は一番にカッコ良かったよと伝えたいと思った。




「おはよう」
時差13時間。これが今の私達の距離。私が夜、お風呂から上がって電話をかければモーニングコールができる。向こうでも早起きは変わらないみたいで、寝起きの声を聞いたことはない。私がおはよう、と言えば短く「はよ」と返してくれる。
最初に電話をかけるときはとても緊張した。ネットでタイムゾーンを調べて、何かあったわけでもないのに掛けてもいいものかと一時間はベッドの上で悩み、しかし最終的には発信ボタンを押していた。一コールの後、耳に当てたスマホから爆豪くんの声が聞こえてきた時はそれだけで胸がいっぱいになってしまって、話すことを考えていなかったことに気がついたのは向こうから「なんかあったんかよ」と不機嫌そうに尋ねられた時だった。慌ててなんでもないことと、でも声を聞きたかったと素直に伝えれば彼は特に怒ることはなかったけれど、暇人、という新しい呼称で呼ばれることになった。特に積もる話もなく、向こうもこれから出勤とのことで、そこで終わりそうな通話に滑り込ませるように「また電話してもいい?」と聞いた。爆豪くんは好きにしろと答えた。
それからは定期的にこうやって電話をするようにしている。今日も朝のジョギングが終わった後のようで、向こうの重厚なドアが閉まる音が聞こえてきた。
「どう?そっち慣れた?」
『飯が不味い』
「それは…一大事だね」
『なんもかんも油っこすぎんだよ、豚製造ラインじゃねぇんだぞクソが』
「揚げバターっていうのもあるって聞いたけど」
『やめろ。聞いただけで胃もたれるわ』
基本的に爆豪くんから連絡が来ることはないので、時差を勘案して私から電話をするようにしている。それでも一週間に一度くらいで、二言三言で終わってしまう時もある。付き合い始めた二人にとってこれが長いのか短いのかは分からないけれど、ちゃんと電話に出てくれるだけで凄く安心する。そんな関係でもう一ヶ月が経っていた。
『てめぇは、何かねぇのか』
「なんも。平和だよ」
『つまんねぇな』
「でしょうねぇ」 早々何があるわけでもない。遠く海の向こうの彼が舌打ちをする音が聞こえた。私が一流エンターテイナーであっても爆豪くんを楽しませるには骨が折れると思う。
でも、舌打ちしたからといって機嫌が悪いわけではない。これは彼の癖で、息継ぎみたいなものだから、彼が生きて息をしている証拠なのだ。
「爆豪くんがそっちで活躍してるとこ見たいなぁ」
『こっちはアンチヒーローはウケ悪ィんだよ』
「あぁ~、」
『あぁ~、じゃねぇわ!ぶっ飛ばすぞゴラァ!!』
「…っ、ふふっ、…や、だって、アンチヒーローって意識してたんだね」
私が笑いながら言うと、少しだけ不満気な声が返ってくる。
『つえぇんなら何でもいいだろが。勝った奴が一番つえぇんだよ』
「そうだね」
『てめぇ今どうでもいいと思っとんだろ』
「思ってないよ。…ね、爆豪くん、一回テレビ電話にしてもいい?」
『あ?』
赤い目、皺を寄せた眉間、吊り上がった眉、への口。あの不機嫌な顔が目の前にないから、どうも実感がない。だから顔を見たいなぁと思ったのだが、その提案はすぐさま断られる。
『却下。もう切んぞ』
「…うん、ごめん。またね」
ぷつん、と切れれば私と爆豪くんを繋ぐものはなくなる。時差13時間。気軽に会うことも、気軽に話すこともできない。それが今の私達の距離。




「さて、今日のヒーローインタビューはこの人!」
駅前ビルのデジタルサイネージからの声に、パトロールでたまたま通りかかった私は思わず立ち止まる。
国内向けのヒーロー特化メディアだ。数ヶ月前には爆豪くんもインタビューを受けていた。雄英の時みたいに全カットされることはなくなったけれど、相変わらず口は悪いから全部は放送されていないんだと思う。編集の人の苦労が偲ばれる。今画面に映し出されたのは新人のヒーローだろうか、意気込みを語る姿は少しだけぎこちない。
爆豪くんはいつも堂々と自信に満ちていた。彼が才能マンで努力家であるが故に、その不遜な態度はそれ相応の力を引き連れていた。遠くても近くてもずっと見てきた彼の姿を、最近全く見ていない。画面越しにも、だ。何故か彼は顔を見せるコミュニケーションツールを使おうとはしない。どんな顔で、どんな場所で、彼が今どういったことをしているのか。今は彼の声だけが私に届く唯一の情報だ。でも、それでは全然胸の隙間が埋まらない。スカスカしたような居心地の悪さを感じながら、またパトロールへと戻る。

何かあったら連絡しろ、とは言われたし、実際私のほうから電話をするようにしている。けれど、爆豪くんは何かあったときに私に連絡してくれるんだろうか。怪我をしたり、また女子に付きまとわれて迷惑をかけられたり、そういった時に相談されたことはなかった。聞き出そうとしても答えてくれなかった。あの時はまだ名前のない関係だったけれど、今は違うのに。
私にも連絡してきてよ。そんな言葉を飲み込んで、丁寧に包んで閉まって。顔が見えないから余計に、めんどくさい女だと言われるのは嫌だった。




休日。毎日のルーティンとなった海外ニュース映像を見ながら、私はぼうっとしていた。爆豪くんが海外に行ってから数ヶ月。その間、通話やメッセージのやり取りはあったものの、それらは私の心を満たすのには全然足りなかった。刺激が足りない。端的に言えば爆豪くん不足である。
多分、本人に言ったところで、何を腑抜けたことをと小馬鹿にされるだろう。そんな小言さえ目の前で聞きたいのに、と思う私は相当重症なのだ。
ニュースは荒野でヴィランの基地を摘発したというテロップが流れていた。あぁ、懐かしいな。雄英の時にこういう大規模な作戦もあったっけ。あの時も、爆豪くんは…
「…会いたいなぁ」
思い出せば出すほどに墓穴を掘る。爆豪くんがヴィランと対峙する時にどんな顔をするだとか、教室で見たあのきらきらしたべっこう飴のような髪だとか、少しだけ皮の厚い乱暴な手だとか、私を見る時の熱のこもった目だとか。なにもかもひっくるめて、私の知っている爆豪勝己たらしめる要素を満たしてほしい。

その時、テレビから怒涛の爆音が鳴り響き、思わず顔を上げた。目に飛び込んできたのは鮮烈な火球。画面越しにでも分かる圧倒的な爆破を私は見た。衝動的に思わず身を乗り出してテレビのボリュームを上げる。
ビルとビルの間、爆風と煙の中に溶けていた黒いシルエットがヴィランに向けて飛び出し、その手のひらから爆破を生み出して加速していく。巨大なヴィランの攻撃をものともせず自在に宙を移動し、繰り出された拳を掻い潜って敵の背後に回る鮮やかな無駄のない動き。

あぁ…!

咆哮、一瞬で画面を覆いつくす程の盛大な爆破。ありったけのニトロに火がついたような、辺り一帯を包む爆発だったが、ビルへの被害は最小限。当たり前だ、と心の私が叫ぶ。思わず手を握りしめていた。飛んだ火花がキラキラ、チラチラとビルのガラスに映り光って、まるでショーの花火のようだなと思った。
ニュースのテロップを追う余裕はなかった。およそ数ヶ月ぶりに見るそのヒーローの背中。その完璧なシルエットに魅せられる。暫くはその余韻に浸るようにリモコンをきつく握り締めていた。

あぁ、あぁ!

そして思い出したように鞄の中身をぶちまけて、目的のスマホを手に取る。パスワード入力が焦れったく感じたのは久しぶりだった。素早く履歴からその番号へコールする。一コール、二コール、三コール。今日はなかなか出ない。早く!早く出て!と急かすように体が前のめりになるのを感じた。その時の私は時差のことなんかすっかり忘れていて、通話が繋がった途端、向こうの確認もせずに叫んでいた。
「爆豪くん!!」
『………っせぇ、てめ、こっち何時だと思っ、』
「めちゃくちゃカッコ良かった!!」
『…………あ゛?』
あぁ、向こうは深夜なのか。今更ながらにほんの少しだけ申し訳ないと思いつつ、だがしかし一番に伝えなければいけないことが私にはあるのだ。これは正当な主張である。
「海外ニュース、見たよ!今日の大型ヴィラン!」
『…あぁ?』
「すごい、久しぶりに爆豪くんがヒーローしてるの見て、ビルの隙間だったのに、あんなにすごい爆破だったのに、全然被害出てないし、一撃で仕留めちゃうし…。私、カッコ良かったって、一番に言いたくて、ずっと……う、うぁぁ〜…」
つい感極まって涙が出てきた。それとは対照的に爆豪くんの返事は落ち着いていて、盛大にため息まで漏らされた。
『…てめぇ馬鹿だろ』
「馬鹿でいいよ……あぁもう、もっかい見返す…」
『マジで馬鹿だな……オイ、切んぞ。こっちは深夜なんだぞボケカス』
「うぅっ、ごめん。ありがとう、おやすみ」
電話の向こうの爆豪くんがとても眠そうで不機嫌で、その声を聞いているうちに段々と冷静になり始めていた。だからというわけではないけれど、爆豪くんがぼそりと呟いた声を私の耳は欠けることなく拾っていて。

『………そういうのは目の前にいる時に言えやブス』

ぷつん。
最後の言葉の破壊力というか、耳に残ったまま離れない福音というか。通話が終わったスマホを呆然と見つめて、今の言葉を頑張って咀嚼する。
「目の前で言え」。爆豪くんはどんな顔でその言葉を伝えてきたのか。顔が見えないから分からない。
衝動的に確かめたくてもう一度掛けてみたけれど、既に電源が切られおり無機質な案内メッセージに阻まれることになった。そうだ、向こうは深夜だった。頑張ったヒーローを労う気持ちでゆっくりとスマホを伏せる。でも。
「やっぱり会いたい」
舌に乗せ、音に乗せ、口から言葉にすればその気持ちはずっと重く尊いものになった。会いたい。会って直接言いたい。画面の中、遠目で眺めてるだけでは渇きは満たせない。ならば、私から乗り込むしかない。待ってろアメリカ…!




と、勢いのまま海外に飛ぶことはできなかった。今の今になって気付いたけれど、そもそも私は爆豪くんが現在住んでいる所を知らないのだ。大人しく帰ってくるまで待つつもりだったし、英会話もそれほど得意ではない。きっと爆豪くんの方も私を呼ぶなんてことは考えていないだろう。
多分聞けば…うん、多分教えてくれるだろうが、出来ればサプライズしたい。いやサプライズというよりはドッキリ?四月、もうすぐ爆豪くんの誕生日という一大イベントがある。やるしかない。




エンデヴァー事務所なら海外へのコネクションもあるのでは?と藁にもすがる思いで轟くんに連絡を取ってみたところ、残念だが知らないとの返事が来た。いきなり出鼻を挫かれてしまったが、それに続いたのは新たな糸口だ。
「緑谷なら知ってんじゃねぇか?爆豪の居るとこ」
「えっ?」
「あいつも行ってたろ、アメリカ」

とりあえず話だけでも、という言葉に誘われて都内の喫茶店で三人で落ち合うことになった。奥の個室を用意してもらい、顔を合わせる。緑谷くん、轟くんの二人の時間を取らせてしまうことに少なからず罪悪感はあったが、どちらかといえば食い気味に緑谷くんが話し始めたので面を食らった。
「うん、多分ワシントンにある事務所だと思う。海外からのヒーローを受け入れてる窓口事務所だし、そこに居なくてもどこいるかはわかるんじゃないかな。僕がお世話になった人と今も連絡してるから話はできると思うよ。
あ、あとはかっちゃんのお母さんに聞いてみようか?かっちゃん、そういう連絡はちゃんとしてるはずだから…」
「…すごい、さすが幼馴染」
思わずぽかんとしてしまった私の向かい側で、轟くんが「な?」という風に苦笑いを見せている。確かに一番早く的確な情報網だった。
しかし、一通り話し合えた緑谷くんはどこか落ち着かないようにそわそわとしている。視線も右に左に彷徨っている。なんだろう、と観察しているとそのうちに目が合った。そこでようやく観念したようにその理由を吐露してくれた。
「あの、さ。どうしてかっちゃんの居場所を知りたいの?」
それはごもっともな質問だった。わざわざアメリカまで爆豪くんを訪ねる理由を私はまだ誰にも伝えていなかった。これは盲点。 別に知られて困る内容でもないので、私は正直に打ち明ける。
「爆豪くん、もうすぐ誕生日でしょ?皆もメールとかすると思うし、私もたまに電話はしたりしてるんだけど…できるなら顔見てお祝いしたいな〜と、思いまして…」
「…もしかして、かっちゃんから告白されたりした…?」
「いや?違うけど…」
「えっ!?」
私の返答を聞いた途端に緑谷くんは固まり、次の瞬間には青ざめて冷や汗を垂らし始めた。隣の轟くんも何故か驚いた顔をしていて…あれ、私何かまずいことを言ったのか…?
「ご、ごご、ごめん!!今の聞かなかったことにしてくれないかな!特にかっちゃんには内緒で…!!」
「どうして?」
「いや、だって、これはかっちゃんの問題で…!あぁ…いや、あの、えっと…あああどうしよう…」
異様におろおろする緑谷くんの隣で、轟くんは至って冷静だった。いつも通りのマイペースでこの場を見守っている。
「別にいいんじゃねぇか?この際教えちまえば」
「そういうわけにはいかないよ!僕、かっちゃんに爆殺されちゃうよ…!!」
「じゃあ俺が言う」
「え、」
轟くんのどことなく真面目な顔に、何故かこちらまで緊張してきた。一体二人はなんの話をしているんだろう。爆豪くんに関わる何か…。
「爆豪はお前に気があるらしいぞ」
茶化すことも照れることもなく、淡々と伝えられた事実。轟くんもそういう話題に乗ることがあるんだなぁと、なんだか他人事みたいな感想を抱いた。その横で緑谷くんはまた顔を真っ青にしながらおろおろしている。
爆豪くんが、私に。まぁ、そりゃそうでなきゃ付き合うなんてことにはならないだろう。しかし、それを緑谷くんや轟くんが知っていたという事実が驚きである。爆豪くんはそんなことをやたらと他人に言いふらしたりはしないだろうし、切島くん達ならともかく、この二人には妙に突っかかっていたので相談なんか絶対にしないだろうに。
「あ、えっと…そう、みたいですね」
「知ってたのか?」
「知ってたっていうか…。ああそうか、爆豪くんからは言われてないからか…」
爆豪くんから告白されたか?という問いを否定したから、私達には何もないと思ったのか。なるほど。そういえばクラスのみんなにも言ってない。爆豪くんがバラしていないのなら言っていいものかと思って言わなかったのだが、どうせ知れ渡るならいつだって同じだろう。まずは誤解をちゃんと訂正しなければならない。私達は今ちゃんと名前のある関係なのだから。
「爆豪くんからじゃなくて、私から告白したんだよ」
そう言えば緑谷くんはまたびっくしりしてジュースを誤飲して噎せていた。そ、そんなに驚くようなことなの?
暫く轟くんが背中をさすってやり、数分後にようやく落ち着いて会話は再開された。
「え、じゃあ今二人は付き合ってる…の?」
「…多分、そういうことになりますね」
「見かけによらず度胸あんだな、お前」
「う~ん…私はまだ夢かなぁって思ってるんだけど…。でも否定されないからいいんだなぁって」
困惑していた緑谷くんもやっと落ち着いたようで、見るからにホッとしていた。爆豪くんの好意を勝手にバラしてしまったと思って焦っていたようだ。
「まぁ、付き合ってんなら俺らがどうこう言う話じゃねぇな」
「でも良かった。かっちゃん、僕があの雑誌見せた時からだいぶ機嫌悪かったから…」
「…それってもしかして、私が載ったやつ?」
「そう。あの時の雑誌、かっちゃんが持ってっちゃったんだよね。…かっちゃんに何か言われたりしなかった?」
「なんか唐突に呼び出されてお小言を…って、え?持ってった?」
「うん」
おい、人の物取ったらダメだろ爆豪くん。保存用も買ってあったから大丈夫だよ、なんて緑谷くんもどこかズレていると思う。そんなに買ってどうするのだ。
その雑誌、持っていかれてどうなったんだろう。爆破処理されたんだろうか。呼び出していちゃもん付けて来るくらいだから、やはり消し炭にされたと思うのが妥当だろうか。
しかし、爆豪くんが強奪したことは事実なので代わりに私が雑誌代弁償するよと申し出てみたが、緑谷くんは頑として受け取ってくれなかった。それどころか、
「あの、僕が言うのも何だけど…。かっちゃんに暴力されたり暴言吐かれたりしたらいつでも言ってね。さすがに付き合っててそれはまずいって注意するから」
なんて、DV的な心配をされてしまった。あぁ、そうか。いくら人間性が多少丸くなろうとも、元の性質を知っている彼からすればハラハラというレベルではないのだろう。私の知っている雄英の時からの爆豪くんだって、男女平等に隔てなく暴言・暴力・独断・傲慢の男だったから。
だから、ここからの話は多分誰に言っても信じてもらえないと思う。
「暴言も暴力もいつも通りだけど」
「え」
「でも、優しいよ」
二人分の視線が私を見た。それ、本当に大丈夫?と恐る恐る緑谷くんに念押しされてしまった。やっぱり、信じてもらえないんだなぁ。轟くんも怪訝そうな顔で本当か?なんて言ってるし。
爆豪くんが私に対して容赦のないことは出会ったときから変わりないし、今更だし。でも、たまに見せる気遣いやそれに付随する表情、行動に心を揺り動かされていることも確かで、現に私はこうして爆豪くんに会いたがっている。あの乱暴で横暴な手を取ったのは間違いなく私で、私の意思なのだ。
さすがに疑いを持たれたままというのは、付き合っているという手前あまり居心地のいいものではない。精一杯のフォローをすべく、ヒーローの顔で対応する。
「本当に大丈夫だよ!それに、私だって伊達にヒーローじゃないんだし、やられた分はやり返すし」
「い、いいの…?それ」
「…俺らにはわかんねぇことなのかもな」
結局、一ミリも理解は得られないまま、この会はお開きとなった。
後日、緑谷くんの伝手で爆豪くんの現在の住所が判明し、私の目的は無事達成される。その際に僕が教えたって言わないでねと物凄く念を押された。…そんなに?

(2020/8/15) <PREV▼ TOPNEXT >